【No.3 気質の違い】
K's ANTIQUE店主
川口宗彦
時がつくる価値に敬意
英国の住宅の耐用年数は二百年から三百年が普通らしい。八百年前の建物が現役でまかり通るのも珍しくないという。
イングランド中央部のコッツウオルズは、そうした気の遠くなるような古い建物が立ち並ぶ。日本人観光客が多い場所だが、古い建物が自然の景観の中にしっかりとおさまり、もともと人為的である建造物が、自然の美しさを醸成しているようにさえ思えてくる。
先日訪れたウェールズの旧邸は、修復作業に二十年もかかるという。どうも住宅耐用年数に対する考え方が、日本人と英国人とは根本的に違うようだ。古い住宅の売買では、オバケが出るという物件にプレミアムがつくというのも面白い。
この、家に対する英国人の感覚は、家具に対しても同様だ。
日本人なら不用品として粗大ごみとして扱う古家具に、たとえそれが傷やがたつきから粗大ゴミそのものであっても、その古さに何ものにも代えられない価値を見いだそうとする視点が、彼らにはあるらしい。
オークションに古家具を出品した人が、その代価で何を求めるかといえば、さらに古い家具だというのも珍しくない。
そして、手放した家具にはほとんどの場合、この家具をいかに大事に愛用してきたかの証(サイン、手帳、写真など)をしのばせている。さらに修理が加わったものには、修理職人のサインと日付が入っていたりする。
英国人は、不用品を処分するというだけの感覚で古家具を手放すわけではないらしい。モノを大事に大事に使い、時間がつくり出す人手の及ばない価値に敬意を払い、そこに憩いを求める精神が根底にあるように思えてならない。
河北新報・13年8月25日掲載
【No.1 始まりはコーヒー】
【No.2 頑固精神】
【No.3 気質の違い】
【No.4 共通点】
【No.5 収集家の技術】
【No.6 のみの市】
【No.7 遺言でベンチを】
【No.8 里帰り】
【No.9 職人を大事に】
【No.10 歴史の重さ】
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