K's ANTIQUE店主
川口 宗彦
幻の看板
 昨年七月、「こぅふぃかん」を開店してまもなくのころ、ふらりと入ってきた芸術家風の客人。カウンターに座り、店内を見回し、唐突に…「店頭の看板を作らせてほしい」
 代金はいらないから、ぜひにと言う。軽い気持ちでハイと返事をして一年が過ぎた。「幻の看板だったネ」とスタッフ一同で過去形にしていた。
 ところが、一年振りにヒョイと現れ、やっと看板のデッサンが出来、材料を入手したので「近々取り付けたい」と。「もうあきらめていました」とこちらは言った。芸術家いわく、自分のイメージに妥協したくなかたとのこと。
 ならば完成のおりにはなにか相当の御礼をと言ったところ…「何もいりません。ただこの店で最高の一杯をご馳走してください」。最高のコーヒー一杯?これほど難しいものはないと考え込んでいると、何年でも待ちますからとほほえんでいる。
 こんなコーヒーマニアがいる限り、この店は続けていかなければ。

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