K's ANTIQUE店主
川口 宗彦
小さな喫茶店の情景
 約50キロの道のりを、毎週金曜日の夜『雪の日も風の日も』、コーヒー豆を求めに来店するご夫婦がいる。としのころなら六十歳、ご主人がカウンターでコーヒーを淹(た)てる動作を熱心に見入り、決まってモカマタリを飲む。
 ほとんど会話を交わすこともなく、帰りに一週間分のコーヒー豆を求めていく。モカ500グラム、スマトラ200グラム、ブラジル300グラムと。その量が結構なものなので、感謝の言葉を添えながら、奥様にコーヒー豆の行方をさりげなく聞く。
「私はコーヒーの味など何も知らないんです。ただ主人が一日に何度も何度も、それは熱心に私のためにコーヒーを淹ててくれるんです。『ちょっと熱いか?苦すぎるか?今日は絶品のオリジナルブレンドだぞ…』と。そんな主人のコーヒーが私にとってただただ、おいしいんです」
 すばらしいご夫婦、粋なコーヒーを見た思いがする。
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